Sメーターは何dBステップ?




アマチュア無線におけるシグナルレポートはRS、もしくは RSTで送ります。
この内のSは信号強度で、リグ(受信機の)
普通はSメーターの指示値を参考にしますね。

さて、このSメーター、実際はどういう値を示しているのでしょうか?

最大値はS9、最小値はS1です。これは常識。
実際にはS9の基準値を超えた場合、それをdBで示します。ルールには無いけど。
たとえばS9の信号より電圧値で10倍高い場合、
S9+20dBをメーターは指示しますし、たいてい相手にもそう伝えます。

S9は基準値と言えますが、この強さは決まっていません。
また、S1までのレベル差についても規定はありません。
もともとAGC電圧を読んでいた関係上、
リグの設計でカーブが変わってしまうので、簡単には規定できないのです。

S9についてはメーター感度をいじることである程度規定できます。
このため、S9のレベルを明示しているリグもあります。

S1(触れはじめ)を規定した方が良いのでは?、
もしくは、S5(真ん中)を規定したら?という意見もあるかもしれませんが、
元来S1はAGCの立ち上がり点であり、設計で一番ばらつくところになります。
S5は確かに数字的には真ん中ですが、+60dBのあたりも含めると左寄り
S7ないしはS9が一番下になります。ここの一番下をご覧ください



その昔、1950年代に米国のコリンズ社がS9=100μVとしました。
これは開放端であり、最近の表記(有終端)では50μVとなります。

雑音が少ない地域で、AMラジオがノイズ無く受信できるのは
250μV/mぐらいとされていて、
日本のAMラジオ局のサービスエリアを決める告示もこの数値となっています。
5mの長さのアンテナを付けると、250*5*0.1/2=62.5
(電界強度*長さ*実効長への換算係数/有能電圧への変換)
だいたい50μVです。

解放端で100μV(40dBμV)という切りの良い数字であり、
電波が充分強くて放送や通信が心地よく聞こえると考えれば、
まあ、50μVは根拠ある数字です。AM通信が普通の時代でしたから。


さて、問題はS1あたりのステップ数(比率)です。
国際的な取り決めにはこんなのがあります。



IARUの1994年1月の文書からの抜粋です。

コリンズ社もS1あたり6dBと公称していました。下記解説

し、しかし・・・
今のリグのS1あたりのステップは大抵3dBです。
これは6dBとするとS1のレベルが低くなりすぎるからです。

真空管式リグの時代、HF機の受信感度は0.5μV S/N10dBでした。
(その後6〜10dB良くなります)
内部雑音はアンテナ入力端換算で −16dBμV になります。

S9は34dB,ここから6dB×8、48dBを引くと
−14dB、ほとんど内部雑音と同じになってしまうのです。

実際は内部雑音と同じレベルの信号が入ると レベルは3dB増えますから
このときのアンテナ端等価入力値は−13dBμV!
雑音と同じ強さの信号が来ると、Sメーターは1よりも上を指示します。

しかもSSBでは10dB,AMでは19dB(どちらも概算)、
雑音よりも信号が大きくないと了解できません。
SSBでの受信限界は−6dBμVです。
つまり、SSBではほぼS3の信号でないと了解できない、言い換えれば
S一つ6dBでは、RS=51やRS=52はありえないということです。

そこで、S1つあたりを3dBとする流れができました、
S1は+10dBμV、受信限界は−6dBですから、
ノイズが無い環境ならS1の信号をS/N=24dB。良好に受信できます。
ノイズが無ければRS=51は成立するし、ノイズがあれば41、31と悪くなる、
これは実感に合っているのではないでしょうか。

なので、今はSひとつ3dBが一般的になりました。




では、何故6dBステップが提唱されたのでしょうか




以下は推察です



これにはS1とは何ぞや?という基本認識の問題があるように思います。
SINPOコードのS1の意味はご存知でしょうか?
S1は信号が受からない です。
一方RSレポートは信号が受からない時は送りませんから、
S1は最も弱い信号 と、なるわけです。
つまり、受信機が感じられるギリギリの信号。内部雑音とほぼ同じレベルですね。
先ほどの計算とも合っています。

つまりIARUの申し合わせは、信号が了解できる・できない よりも
受信能力の範囲全体をSメーター上に展開しようとしたものと思われます。
ただ、MDS(内部雑音)よりも高い信号では皆Sメーターを振らすというルールでは、
S/Nがプラスでなければ通信できないモード(SSBやFM下記解説では
Sメーターはそこそこ振れているのに交信が成立しない場合が出現します。
これが受け入れられるかどうか、現実には難しい話でしょう。



これはものすごくいい加減なSメーターの例。S=0もあるし・・・。
左端を1にすると、1〜3と3〜6で、目盛り数が違ってしまうので
やむ終えずこうしたと、作者は申しております(笑)。
と、思ってよく見たら、本項冒頭のSメーターにもS=0がある(大笑)。

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IARUの取り決めは・・・


※ 取り決めでは30MHzを超えるバンドではSメーターは20dB高感度にすることが
  求められています。
  ノイズが少ないから感度も良くしろという事なのでしょうけど、
  たとえば、温度17℃の時、20kHz帯域の熱雑音は0.063μVなので、
  Sメーター上ではS=2.6ぐらいになります。
  FM機では宇宙探査パラボラのような
  冷却装置を付けないとSはこれ以上下がりません。液体窒素でも用意しますかhi
  2.7kHz(SSB)でも熱雑音は0.023μV。これがほぼS=1。
  SSB機でもノイズフィギア=0dB でないと空Sが出現します。
受信能力の下限から上限を表現しているとすると理屈としては合っているのですが、実用を考えると何かが間違っている・・・・



KWM−2(2A)の場合


★ 50μVでS9、S1あたり6dBとすると、コリンズのリグでは話が合わないことになります。
  実は、S5から下が詰まっていて、S1のレベルは結構高めに設定されていたのです。

  KWM−2/2Aの説明書の4.6.17ではSメーターの振れ初めを2.3μVにするように指示しています。
  (解放端25μVのSSG出力に取説 図4.3のアッテネータを通している)
  KWM−2/2AのS1〜S9は26.7dBしかなかった訳です。
  8で割るか9で割るかは微妙な処ですが、計算してみるとびっくりしますよ!。

  これにはちゃんと理由があります。IARUと全く関係ない理由です。
  
  もともと、SメーターはAGCのレベルを読んでいたことを思い出してください。
  信号が弱い時にAGCが働くと感度が足りなくなります。
  なので、弱い時は動作させない、DELAYD AGCがあたりまえでした。

  そうすると、Sが低い時、つまりAGCレベルが低い時はAGCが効きません。
  効かないという事はリニアになる訳で、S1〜S5にメーターは止まりにくい、言い換えれば、
  ここのステップはずっと小さかったのです。S1あたり6dBどころか3dBもありませんでした。

  今は知りませんが、昔はDELAYD AGCは国試の問題に出るぐらい有名な動作です。
  思い出してくださいね(ハート)  
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