455kHzについて、更に突っ込んで考えると・・・
NHKの某人気番組には「たぶんこうだったんじゃないかなぁ劇場」という
不定期コーナーがあります。
そこで、同じように「たぶんこうだったんじゃないぁなぁ」というのを
スーパーヘテロダイン受信機の中間周波数、455kHzについて展開してみます。
なぜ、455kHzになったのか。根拠は薄いけれど説得力はソコソコある話となりました。
455kHzの生い立ち
まずは、これを見てください
英語版WIKIPEDIAの500kHzの項です。
1906年11月3日に署名されたベルリンでの最初の国際無線電信条約で
1MHzと500kHzが制定され船舶側が1MHzとなったと書いてあります。
まだB電波(火花)の時代です。
1912年の条約の規則により、船の周波数が1,000kHzから500kHzに変更されました。
中波帯無線電信の非常通信周波数の誕生です!。カバー範囲はこんな感じ 600mが500kHzです。
注)WIKIPEDIAにはQSY(周波数変更)が可能とされたと書いてありますが、
B電波の時代の帯域は広かったので、QSYはそんなになかったはずです。
混信も大問題となっていました。
フランス語のWIKIPEDIAには、387 kHz、400kHz、414 kHz、428.5 kHz、461.5 kHzが、
使われていたと書かれています。
このぐらい離れていればB電波でもアンテナの同調だけでエネルギーを絞れて
461.5kHz以外は500kHzに混信を与えなかったと思われます。
周波数だと半端ですが、実は切りの良い波長でもあります。
B電波なのでアンテナコイル切り替えでQSYできます。
ここで461.5kHzが使われていた事に注目!。455kHzとは違うと思われるかもしれませんが、
461.5kという数字は、単に波長650mから逆算した物で、
B電波の帯域を考えると、455kHzもその中に含まれています。
455kHzが使われ始めた頃の話
1932年のマドリッドラジオ会議での協定で、呼び出し後の通信周波数が指定されました。
沿岸局はその局ごとに周波数が決まっていて、
船舶は425kHz、454kHz、468kHz、480kHz、512 kHzを使用します。
注)前の項に載せられている周波数の隙間に配置されたようです。
wikiのどの記述を信じるかは難しい部分がありますが、454kHzという周波数が使われていた事だけは
間違いないと思われます。
船舶側の送信機にはちゃんと装備されていましたから。
(パネル面の写っている写真が掲載されていたのですが無くなったので、リンク先変更しました)
第二次世界大戦をはさんで、このルールは継続されました。
こんなかんじの送信機を経て
これは結構近年
1979年に導入されたソリッドステート機!。トランジスタの時代の機械です。
この写真の中には非常用と書かれたものもあります。
実際、大型の常用送信機ではもっと多くの周波数が用意されていました。、
それはともかく、しつこいようですが、大切な話としては、
船舶無線が出現してから454kHzはずっと、船舶が送信する周波数だったという事です。
船舶は海の上に居る訳であり、中波はそんなに遠くに飛びません。
パワーが大きくアンテナも大きな海岸局と比べると、
船舶局の実効出力ははるかに小さくなります。
このあたりは454kHz,461.5kHzと、船舶用周波数が並んでいますから、
この間は海岸局は基本的には配置できません。(A2送信ですから・・・・。)
454kHzである波長660mは、陸上から見ると感覚的に空いている周波数だったのでしょう。
ちなみに、船舶の送信機の最大出力は実効値(アンテナの利得も含めた数値)で
50Wというのが国際基準です。
(ITUのCCIRのレポート(注意!巨大なPDFです)では、50W e.i.r.p.と記載)しています。
実際は400〜500Wの送信機とT型アンテナを組み合わせていました。
ちなみにこのアンテナについて、CCIRではアンテナゲインを概算-7dBとしています。
455kHz、VS 463kHz
そして第二次大戦中の米国での戦時統制(標準化)で
この周波数を中間周波数に採用!。
前ページにあるように、ビートの問題で455kHzにしたのだと思われます。
って、これだけだとちょっと話が飛んでいますね。
RCAの資料にあった460kHz台、
日本でも使われた463kHzが採用されなかった理由も考えましょう。
結論だけ言えば、放送波に対するビートを考えると、455kHzを採用しない場合、
465kHzにするしかなかったからという事ではないでしょうか。
この、465kHzは高すぎです。
実は、将来的に454kHzまでの低い周波数を船舶側にするという構想があったようで、
その場合、465kHzは海岸局側の周波数のすぐ近くとなります。
500W e.i.r.p. 船舶局の10倍の強さ、しかも送信点は陸上です。ラジオに混信します。
これはここに書いているよりも、もう少し後の時代に実現しました。
AMラジオの中間周波数として455kHzが使用開始された後も
船舶側では454kHzが使われ続けていて、特にトラブルはありませんでしたから、
船舶の送信波はラジオの中間周波数信号に影響を与えなかったという事になります。
♪めでたしめでたし♪
455kHzを日本も採用
そして、第二次世界大戦が終わり、日本製のラジオを輸出する際に
もしくは、日本製のコイルを輸出する際に、
米国のラジオの中間周波数が統一されていることに気が付いたのではないでしょうか。
455kHzを中間周波数としないと売れないので
日本のラジオも455kHzを中間周波数に直したのでしょう。
本文にも書いた通り、日本製ラジオが455kHzを採用し始めたのは
終戦よりも少し後、日本が北米にラジオ部品を輸出し始めた頃からです。
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C JJ1GRK 2021