135kHz帯の電波伝搬
結論から言うと、垂直偏波の地表波しか存在できません。
・地表波しか存在できない理由は、下図をご覧下さい。
電界の中点は常に0Vですから、ここ(下図A点)に大地(アース)があると良好に伝播できます(地表波)
・電磁波の波長よりも十分遠い、電界が生じないとみなせるところ
(下図C)にアースがあっても影響はありませんが、
波長2200mの136kHz帯では、これを実現することは非常に大変です。
・下図B点に大地(アース)が来る場合、電圧があるべき点に大地(アース)ができますから、
磁界→電界の誘導が極めて難しくなります。
・水平偏波の場合も同様です。大地という導体に沿って電界を展開することはできませんから、伝播できません。
しつこいようですが、アース(大地)を帰路とする垂直偏波の地表波のみが通常、使われます。
電離層反射波を利用することは困難ですが、地表波は充分遠方まで到達します。
・周波数が低いと、地表波の減衰が少なくなります。
・また、波長が長いので、大地の曲率に起因する減衰も少なくなります。
・このため、ヨーロッパ〜アフリカ のような数千キロの通信も地表波で可能でした。(ただし大電力)
・一方、周波数が低くなるので、電離層の反射場所は低くなります。
水平より下には発射できませんから、ホッピング距離には限度があり、
すべてがベストな状態での最長ホッピングで700kmぐらい?と推定されます。これは地表波のカバー範囲です。
このあたりは地表波も無減衰(2次元に広がるための減衰=自由空間損失のみ)の範囲内ですから、
経路が短い分だけ、確実に地表波の方が強く到達します。
アマチュアスピリットを発揮して、水平偏波やアースレスの伝播を実験してみるのもおもしろいかもしれません。
ただ、電離層反射波と地表波の到達の違いについては、長波全盛時代にいろいろなデータが得られていますから、
まずはその頃のデータに触れてみてください。
でも、面倒だという人のために一例を示しておきます。
太線が150kHzの電波伝搬の実測値です。(電気通信学会 電気通信ハンドブックより引用)
これを見ても、地表波が無減衰に近い様子で到達しているのがわかります。
ちなみに、点線で書かれている線が無減衰(2次元に広がるための減衰のみ)の時の値になります。
さて、このデータを見ると ,最近のDX記録と整合性が取れていない!とお感じになりませんか?
実は、このデータは陸上のもので、海上ではもっと減衰が少なくなります。
だいたい、1w&3000kmで0.1μV/mぐらいです。さすがに0.1μV/mの信号は簡単には受かりませんが、
アンテナ実効長が20m、QRSSによる方式利得が20dBぐらいあれば、見掛け上、1μVを超えるのと同等の
受信機入力となり、静かな環境であれば充分復調可能な信号になります。
2005年、7月のQST誌によると、ヨーロッパでのだいたい距離記録は2000km弱にあるようで、
上の表の限界とほぼ一致しています。
この点、日本は周りが海ですから、DX記録に有利かなとも思われます。
(太字部分 2011/2 追記)
なお、ほとんどの電磁界シミュレータは、大地を利用した地表波伝搬について、正しいデータを出す事ができません。
嘘だと思う方は、ラジアルアース80m4本、855kHz 塔体30m 基部絶縁(ベースローディング)という
データを放り込んでみてください。
これ、とある公開実験の実測値で50%の能率(利得値で−3dB)となったデータなのですが、
放射打ち上げ角度0度(水平方向)で、この-3dBが出たシミュレータはありません。
(周波数が低いので、上方への放射が反射で落ちるなんて事はありえません。必ず0度方向(=水平)を見てください)
電界強度測定器もきちんと校正されたものを使用した、精度の高い実験です。
このときは1kmでの電界測定でしたが、似た無線局では100波長を超える遠方電界でも
同様の実測データが得られています。
ついでにばらしてしまうと、ほとんどの回路シミュレータは、ミクサについて、正しいデータを出せません。
(得意不得意があり、これなら大丈夫という決定版もありません)
シミュレータに頼りすぎないように気をつけましょう!
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