135kHz帯の測定器について
135kHz帯のSWR計 (キット配布品)
どこぞには、135kHz帯のアンテナ系測定器で市販されたものは無いと書かれていましたが、日本には(笑)これがあります。
購入した方全員が135kHz帯の免許を下しているとすると、シェアはだいたい25%というところでしょうか
アンテナチューナについて
作ってみました。ホント。真面目に。SWR計も内蔵しています。
で、結論!
通常よりはるかに広い整合範囲を要求されます。
今回作成したものは、有負荷Q=10程度の回路になりますが、
このクラスの回路では悲しくなるぐらいロスが多くなります。
でも、コア入りで作成するとこのぐらいが限界です。
でも、空芯コイルを使い、Q=100の物を使うと、リンギングが生じてしまいます。
CWでは符号が読み取れない!
(我が家では実際にそういう信号が受かっています)
適当に直列共振を作って直接給電するとうまくいくのに、
チューナを作ってみるとどうもいまいち。不思議なところです。
出力の測定について
原理的には、終端型パワー計はそのまま使えます。
ただし、実際にはパワー検出部に結合コンデンサがあり、それが小さすぎる場合が
ありえますから、
一応、内部を確認してください。
通過型パワー計でこの周波数で使用できるものは無い筈です。
業務用でも信頼できるものは存在しません。
(このため、業務用無線局の自主検査で多少混乱が生じています)
ダミーロードの両端の最大振幅電圧をオシロスコープで読み
出力(w)=(電圧(v)/2.83)^2/50
(実効値の2乗を抵抗値で割る)
という方法が一番確実です。
なお、電流最大=アンテナ整合良好 と判断するような整合調整をしたばあい、
アンテナのインピーダンスは50Ωとは限りませんから、
きちんとアンテナのインピーダンスを測定しておかないと、測定出力はいいかげんな
ものになります。きちんと共振している場合は置換法をお勧めします。
ブリッジを使うよりもはるかに簡便だし、偽共振の心配もありません。
(ブリッジは測定系のインピーダンスが高いため、全体のインピーダンスが低い時など、
ブリッジを外すと測定値がずれる等のトラブルが生じる場合がある。注意が必要です)
置換法がわからない方は、オーディオマニアの方に訊いてみてください。
スピーカーのダンピングファクタは置換法+テスタで測定できますが、同じ方法がこの周波数でも使えます。
また、市販品を使って出力と同時にアンテナインピーダンスを測定する方法もあります。
それは、オシロで電圧を測定するとともに、熱電対電流計(レンタルがあります)で
電流を測定してしまうのです。中波、短波で使える熱電対は長波でも誤差なく使用できます。
また、ジャンクの熱電対は簡単に校正可能です。50Hz(60Hz)とスライダックで.....。
電界強度の測定方法
本来は、枠型空中線を持つ、磁界検出型電界強度計を使用するべきなのですが、
これは誘導界ではまともな数字を出してくれません。
(間違いではないが、この目的では正しくない数字となる)
問題は135kHz帯の波長があまりに長い事で、放射界で測定するには最低でも3波長、
6.6kmは離れる必要があります。
しかし、通常、そんなことは無理です
このため、どうしても計算値を使用する事になります。
でも、いろいろ実験してみたところ、微小アンテナを直接接続したスペアナが、
案外近い数字を示してくれるようだということに気が付きました。
これは、その方法で各中波局の電界を表示させたものですが、
総務省告示に存在する、電界強度計算方法で計算した値と相対値がほぼ同じなのです。
本当は、周波数の違いによる感度差が出る筈なのですが、なぜかほとんど見られません
これは、アンテナが極めて短い場合、そのインピーダンス実部がゼロとみなせる事に起因します。
つまり、スペアナ入力部はハイ受けをしてくれるため、電圧受け、かつ、アンテナ長≒実効長となり、
サイン波様に生じる電流分布に起因する感度差が無視できるようになる為です。
実はこの現象、0.01波長程度でも生じます。
つまり、22m程度のアンテナであれば、測定用としては、電流分布を考えなくても良いわけです。
もちろん、非整合状態(ハイ受け)であるという大前提を忘れてはだめですが。
そこから考えると、実は中波局など無くても、スペアナ管面の電力の絶対値から
電界強度がある程度推定できるということになります。
こうして得た135kHz波の測定値は50mV/mです。(アンテナ長は1.7m)
一方、その上の電波の電界強度はだいたい50mV/mの筈なのですが、
管面の読みは-42dBm、これより算出した電界強度は40mV/m、
約1.9dBの違いがありますが、電磁波の測定では多少の誤差が付き物で
プロの使う電測計でも3dBの誤差までは許容されているぐらいです(規格値)
周囲環境によっても電界強度は大きく変わりますから、1.9dBは許容誤差かなと思いますが、いかがでしょう。
アンテナとの整合について
★アンテナ電流計について
アンテナ電流が最大になるように調整するという方法があるようですが、方向性結合器を使わない場合
かなりずれた場所にチューニングしてしまう可能性は否定できません。
同じ電力なら、50Ωで整合をとるよりも20Ωで整合を取った方が、電流は6割増しになりますからね。
電流計のロスには充分注意してください。
熱電対ならともかく、普通に市販されている整流型の電流計は常用すべきではありません。
リンクコイルを使って検出する場合は、送信信号の歪の発生に充分注意してください。
電流計を入れるとインターフェアが発生するということが充分ありえます。
★SWR計について
市販品としては、
まじかるくらぶ謹製SWR計キットだけが存在するようですが、
サムウェイのTX-2200AもSWR計を内蔵しています。
ちなみに、まじかるのSWR計キットは、TDKのHF-70Tとして売られていたコアを選別して使用しています。
AL値が公称とかなり違っているので、ロット落ち、もしくは販売店の勘違いの可能性もありますが、
SWR計はちゃんと動いているので御心配なく。もちろん設計者は私です。
なお、抵抗ブリッジを使用したSWR計と、方向性結合器を利用したSWR計では、数値が合わない場合があります。
これは、ブリッジは50Ωからの乖離量を示すのに対し、方向性結合器は進行波と反射波の比率を示すからです。
★インピーダンスブリッジについて
1985年ごろ、三田無線から100kHzで測定するブリッジが出ていました。(D1Sの高周波版、多分型番はD1-HF)
これは外部に発振器を付ければ1MHzまで使用可能のもので、135kHz帯で充分使えるものです。
実は135kHz帯では、jxを正確に測定するブリッジが造りにくいのです。
これは、容量の正確なフィルムコンデンサが使用できないためで、セラミックやシルバードマイカでは
誤差が大きすぎてそのままでは使えません。
部品を充分吟味しないと、平衡は取れたけど数値が取れないブリッジになってしまうわけです。
実は、送信機のLPFでもコンデンサの容量確度の問題が発生します。
インピーダンスベクトルメーターが使えると良いのですが................
スペクトラムアナライザの問題点
★分解能の問題
周波数が低いので、高調波との間隔もせまくなります。
このため、分解能の低いスペアナでは、高調波を観測する事が困難になる場合があります。
たとえば、BW=10kHz というローコスト品でも、通常高調波を観測するのには支障ありませんが
BW=10kHz(-3dB)の機械では、BW=135kHzで-60dB取れていない場合が多々あります。
つまり、このスペアナでは、第二高調波は-60dB以下になると測定できないのです。
St-Gigaなど、UHF/SHF用の簡易なものでは、局発のドリフトへの対処ということもあり、
もっと分解能は悪いので、当然、高調波を測定する事はできません。
★測定下限の問題
スペクトラムアナライザには当然のことながら、測定下限があります。
これに引っかかってしまうのです。
表示に現れるノイズは内部のアンプが出すものなので、周波数特性の参考にはなりません。
面倒でもSSGの信号で確認してください。
★パワー計検出回路の問題
パワー計の測定用検出回路はコンデンサで結合しているのが普通ですが、このコンデンサの容量が
不足する場合があります。というよりも普通は不足しているのが普通です。
良くつかわれている0.01uFは135kHzでは100Ωを超えてしまう事に注意してください。
オシロスコープの注意点
★上限は最低でも20MHzの物を!
理由は簡単です。
観測したいのは送信信号ではなく、送信信号以外の信号(スプリアス)の有無ですから、
送信機に使っている素子の上限周波数までの帯域を持っていないと
寄生振動などを観測する事が出来ません。ですから、広帯域のオシロが必要になります。
オーディオ用は使えません。
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