08年6月14日、震度6強、多大な被害をもたらせた地震がありました。
このときの発令状況はこのとおりです。
0と書かれているのが緊急地震速報の発令時刻。この円より内側の地域は全く間に合っていません。
この資料の言う発令時刻は特定報であり、一般に告知される一般報の発令まではさらに1秒掛かっています。
つまり、震度6強の地域は全く間に合わなかったというわけです
また、伝送には3〜5秒掛かります。
たとえば、気象支援センターでの再配信→各テレビ局の再配信サーバー→テロップ装置という
形でテレビのテロップになるまでは3秒、そこから視聴者に到達するまでに2秒掛かるのです
とすると、この発令資料は、+6秒のところが本当のゼロとなります。
簡単に言えば、震度5強以上、震源から50km以内の地域は全部間に合っていないということを示しています。
気象庁は60km以上離れた大都市部では、間に合ったとしているようですが、
そんなところはエレベータに普通に付いているP波センサで充分なんですね。
速報を活用しなくてもS波に対して7秒の余裕が得られています
実はこの地震、緊急地震速報の観測網にとっては理想に近い地震だったのですが、
やはりうまくいっていません。
あ、何度も言うようですが、特定報を使った鉄道の緊急停止などであれば
意味が無いわけではありません。
警報化して一般に知らせて.....というあたりに無理があるのです
08年6月 加筆
'08年4月28日 宮古島近海 宮古島に地震が到達した5秒後に速報発表
'08年5月8日 茨城県沖 地震発生から速報発表まで58秒
運用開始から今までに発令されたのはこの2件だけ。いずれも揺れには間に合っていません。
まあ、考えれば当たり前なのですけどね。
茨城の方は、少々やむ終えない部分があり、地震の規模がもう少し大きければ
もっと早く発表されていた可能性が高いのですが、海底深い地震だったので
やはり間に合わなかったでしょう。
どちらも伝達にかかる時間は除いた数字です。(通常4〜5秒掛かります)
'08 5/13 加筆
最近、緊急地震速報という言葉が出回っています。
要は、地震が発生したらその揺れが到達する前に警報を出せば、
なんらかの対応が可能だろう という考え方の警報です。
初期微動であるP波を検出し、警報を出せば、P波とS波の時間差と
距離差の両方で時間が稼げる という話です。
分かりやすいですね。これうまくいくのであれば
列車や車はこの警報を聞いたらブレーキを掛ければ大惨事を免れるわけです。
エレベーターも途中階に止まることができます。
さあ、この警報、本当に役に立つのでしょうか?
ちなみに、情報の伝達速度は、
地震波から判断するまでに2秒、警報の伝達時間に3秒掛かります。
これは、気象庁→気象情報支援センター→各配信業者→ユーザー と伝達されるためです。
震源の深さが30kmの時、地震計は3.75秒後に地震を捉え、その5秒後に警報が送信されます。
計8.75秒。
中越沖地震では震源が17kmの為、3秒ちょっとで地震を捉え、7秒後に一般利用者向け速報を出しました
伝送時間3秒を加えると、ユーザーに届くまで13秒掛かったわけです。
一方、S波はこの間に、49km進みます。震源から40kmの間は手遅れでした。
発生から5秒台(≒6秒)で警報を出したという報道もありますが、
あそこで出たのは高度利用者向け第一報。1地点測定データのため誤差が大きすぎます。
警報は震度6弱、実際は最大震度3なんて誤差もありました。(震源小田原)
また、警報は正確(震度5強)だけど、一般利用者向け速報が出るまで30秒掛かり、
揺れはとっくに終わっていた地震も10/1にありました。
さて、実際は警報を利用するまでのタイムラグもあります。
たとえば、鉄道では、列車にそれを伝えるための時間、ブレーキが動作するまでの時間。
TV、ラジオでは視聴者、聴取者に伝えるのに必要な時間です。
2007年7月の中越沖地震では、震源から原発までの距離は20kmですから、
誤差の多い第一報も手遅れで、(地震計が震源の真上にあるなんていう事も滅多にないが)
実際に柏崎、寺泊、長岡といった、被害集中地域では全く間に合いませんでした。
参考データ
結論は簡単です。
地震の揺れは震源近くほどでかい
震源近くでは間に合わない
もしも震源から離れたところで被害を出すような地震があるのなら有益だけど
普通の地震は震源から近いところでしか被害は出さない
鉄道なんかは別にしても、普通の人の役に立つのかな?
c JJ1GRK 2007
追伸:12月1日から、この速報は警報の扱いになりました。
外郭団体の気象支援センターは介さずにユーザーに届きます。
従来の、情報は無料、だけど配信費は受信者持ちという話がおかしかったのですけどね。
ちなみにこれからも回線費は受信者持ちです。