お手軽SDRとして、USBドングルの活用があります



最近、SDRが流行っていますね。Software Defined Radio。
私も、NS9542を使用したラジオを組んだり、Rockyというソフトウェアラジオソフトと
組み合わせてSDRを作ったりしてきたのですが、
このところ、USB-Dongle(USB端子に接続する小さな装置と言う意味)を利用した
SDRが流行っている様なので、入手し、ちょっと性能テストをやってみました。



まずは、感度測定




ナローFMとSSBで感度を測定してみました。
20MHz以下と1GHz以上は完全にブロックされている感じです。
(チューナーチップの動作上限が1002MHzでした)


モード別の感度、詳細データ


すべて有終端W-FMN-FMSSBAM
(dBμV or dB)(±75k DIV)(±3kHz DIV)(BW=2.4KHz)(BW=6kHz,30%)
80.1MHz受信感度 35431834
433.1MHz受信感度3036722
ブロッキング(433)85848484
Dレンジ (433)61608772

注)Dレンジはブロッキングダイナミックレンジ。この手の機器ではブロッキングの発生とIMの発生はほぼ同レベル。


これらの数値、どう思いますか?

元々がUHF-TV受信用の物なので、UHF帯で性能が出る様につくられています。
そして、デジタルTVはOFDMのPSK つまり振幅変調を含む位相変調なので、
そこで良い性能が出るようになっているようです。

CWやSSBは位相変調(PSK)の復調過程で簡単に生成できますから、高感度。
一方、周波数変調波(FM)は、一旦位相検波した後で、ベクトルの回転速度から
復調信号を作る必要があるので高感度にしにくいようです。(歪は少ないハズ)
特に、周波数偏移が少ないナローFMでは、このベクトルの長さが少ないので
感度は低めに出てしまうという事なのでしょう。

SINAD=12dBでの測定なのでスレシホールドレベル以下、この条件では普通なら
N-FMの方がW-FMよりも良い数値になるのですが・・・・・。逆の結果になりました。

通常、N-FMの受信回路を組む時はMC3362系のICチップを使っているので
RTL2832Uの性能に期待したのですが、まだ通信用にはならないですね。
SSBでは87dBのダイナミックレンジがあることからわかるとおり、
デジタルTVのワンセグ受信用には充分でしょうけど。
(アンテナの向きで信号を弱めることもできますから)

ARRLラボのテスト手順書にも、ダイレクトコンバージョンタイプのSDRには
気をつけろ!、ADCがブロッキングするので+10dBm以上入れるな。とあります。
まさにそれを裏付けるようなデータを得る事ができました。

あ、このドングル、もう少しいじってみます。
チューナーチップやADCの性能の問題か、ダイレクトサンプリングのやりかたの問題か。
とにかく、どうもノイズが多い様な気がするので。



チューナチップの内部構成です。RF-AGC、IF-AGCの両方が用意されています。
データシートを見る限り、AGCの動作範囲は104dBあるのですが、
SDRソフト(SDR#)側がIF-AGCを使わないように設定している可能性もあります。



追加 2013年10月のQST誌に、ソフトウェアトランシーバのデータが載っていました。
   9MHz〜21.5MHz Peaberry V2というキットの特性です。

すべて有終端W-FMN-FMSSBAM
(dBμV or dB)(±75k DIV)(±3kHz DIV)(BW=2.4KHz)(BW=6kHz,30%)
14MHz受信感度 −−−+19+9 (注)+27
Dレンジ(14MHz)101 (注)

(注)元データが400Hz-BWのため、2.4kHzに換算。Dレンジは上と同じくブロッキングダイナミックレンジ。

これを見ると、やはり、得意なのはSSB系のようです。
50μV(比較的重いSメータのS9)は、+34dBuVですから、大型機のS2の信号ならなんとかSSBでも聴き取れる筈です。
一方、N-FMのSINAD12dBが+19dBuVというのは、実用にするには少々厳しいところですね。
S5の信号がノイズまみれでやっと聴き取れる感じになります。
SDRの場合、プリアンプを入れて感度を改善する訳にもいかないのが難しいところです。(ADCのリニア範囲を出てしまう)
でも、さすが通信機キット。USBドングルよりは遥かに良い性能です。


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