サルでもわかる?

令和のコメ騒動解説 2025年6月7日版



ニュースを見るとコメ問題ばかり。主食の値段が倍になるというのは尋常ではないわけで、
日本がもっと貧しい国だったら暴動が起きてもおかしくないところです。

海外には安いコメがあるのに・・・・・。5キロで1705円の関税を払わないと輸入もできません。
消えた21万トンなんて不思議な話もありますが、
それよりも、消えた30万トン(3月から4月にかけて放出された備蓄米)の方が不思議です。

一体何が起きた&起きているのでしょうか。
以下、真面目に考察してみました。
根拠を明確にするためにリンクを張りましたが、いつまであるのかはわかりません。
興味ある方は早めにリンク先の記述を確認しておいてください。


大前提※ひと月当たりのコメの消費は60万トン※

正確には毎年、毎月違うのですが、キリの良い数字として覚えておいてください。
これを覚えておくと以後の理解にもの凄く役立ちます。
ニュースを見るときにも、何トンというニュースが何か月分あたるのかがわかるのです。
              なお、以下に出てくるコメの量についての数字はすべて玄米です。

1)強い減反があったのは2022年のコメ


 2021年には701万トン生産されたコメですが、2022年産のコメは670万トン。作況指数は101。
 作柄が悪いわけではありません。
 2022年産水稲の作付面積は135万5,000haで、前年産に比べ4万8,000ha減少しているので、生産量が減ったのです。
 国としての減反は行われていません。作付面積の調整は○○がやっています。
 

2)収穫減があったのは2023年のコメ


 23年産コメは猛暑でくず米が増えたと言われていますが、作況指数はまたもや101で平年並み。
 作況指数がおかしいという指摘もありますが、これを否定すると収穫量などコメについての全統計数値が否定されることをお忘れなく
 そして、作況指数は101なのに収穫は9万トン減っています。これは水田が前年産に比べ9,000ha減少しているためです。
 もちろん、この時も国としての減反は行われていません。
 

3)2023年の9月には新米の先食いがあった


 米の不足感があったためか、新米需要が例年より旺盛でした。
 この資料で見てほしいのは2022年と2023年の価格差。②と⑤を比較してください。
 高いコメはあまり価格が上がっていませんが、安いコメはどっと上がっています。
 安いコメへの強い指向が伺えます。値上げして単価が下がる時は値段を上げてはいけないのですが・・・飲食業の鉄則です
 また、この資料を見ると、2022年(令和4年)、2023年(令和5年)のコメの値段が上がっていることがわかります。
 それだけではなく、2023年(令和5年)はコメの需要が増えていることも・・・・。

4)2024年の4月ごろから民間在庫が少ないことがわかっていた。


 2022年4月238万トン(2021年産) 2023年4月219万トン(2022年産) 2024年4月180万トン(2023年産)
 さて、これ、何の数字かわかりますか?
 農水省資料から読み解ける、コメの民間在庫量なんです。
 作付けを減らしたので、2023年は19万トン、在庫が減っています。 
 この19万トンは需要の先食いという形で2023年産米の在庫を減らしました
 つまり、2023年は19万+9万トン(作付け調整分)=28万トン もともと不足する形になっていたのです。
 そして、2023年はコメの需要増。これが2021年比較で3万トン、2022年比較で14万トン。どちらを基準にするかは難しいので平均を取ると8万5千トン。
 28万トン+8万5千トン=36万5千トン。
 民間在庫の減少量 39万トンとほぼ数字が合っています。
 さすが農水省。正確な統計です。笑えないけど。
 各業者さんはこの頃在庫が異常に少ないことに気が付いた筈です。

5)2024年8月の米騒動について


 8月の米騒動は8月中旬からひどくなりました。新米の時期のほぼ1か月前からです。
 米の流通在庫が減っているうえに、南海トラフ地震関連の“備蓄の勧め”による買いだめもありました。
 農水省は「新米が出回れば大丈夫」としましたが、実は端境期に39万トン足りなかったのです。
 これは約20日分の需要と同じ。実際、コメが姿を消した期間はこのぐらいです。

6)2024年9月から11月にかけて


 さて、新米が出回りましたが、農水省の思惑通りに値段は下がりません。
 流通側はコメが足りないことを知っていますから、安値で売る気は無い訳です。
 最初は恐る恐る・・・、途中からどんどん値を釣り上げていきます。
 儲かる!ということで異業種も参入。
 肌感覚では5キロ4000円(税込み)ぐらいまで減段が上がりました。

7)消えた21万トン。当初、政府は認めない!


 さて、さすがにまずいということで、政府は流通を調べ始めました。
 この結果が有名な、消えた21万トンです。
 当初、その米は流通にあると政府は説明していましたが、出てきません。
 2024年の収穫量は需要より10万トン多いのだから問題無いとも答弁しています。
 でも実際は端境期に39万トン足りなかったのです。10万トン増えても差し引き29万トンの在庫不足です。
 嘘のようですが、コメ不足の20日間に国民が2割程度(8万トン)コメを食べる量を減らしたと考えると、21万トンの在庫不足。
 これで消えたコメの量と、計算がぴったりと合います
オイオイ!
 2025年3月ごろは、肌感覚で5キロ4500円(税込み)。本来はこの時期に値が上がるのはちょっと変です。
 恐る恐る、半年かけてコメの値段を上げていった…そんな感じです。

8)備蓄米の放出量について


 そこで米価を下げるべく行われた最初の3月の備蓄米の放出は21万トン。効果が出ないので4月に10万トン。
 当初の量は消えたお米の量そのものです。農水省は実情を知っていたとしか思えません。
 次の量はおそらく次の端境期(2025年9月)に不足するであろう、
 半月分(30万トン)を見据えたものではないかと思われます。
21+10≒30です。

9)高値のコメを持っている流通の最善手


 では、流通はどうすれば良いか。安く売る!?、それは最悪手になります。仕入れは4割上がっているし手元に在庫はあるのですから
 簡単です。買っておいて流通させなければ良いのです。店頭での不足は続きますから、値段は下がりません。
 この時のコメは買戻しの特約付きですから在庫のままであっても問題ありません。
 一昨日(2025年6月5日)にテレビに出演した、某流通大手の方が、「輸送・精米が大変」「倉庫が東北にあって・・」と言い訳をしていました。
 普段の販売量が年間280万トンあるのにね。ちなみに消費者に2割しか渡っていないことについては外食産業に売ったと話しています。
 たしかにこうすれば、契約で一定数出さなければいけない外食産業には恩が売れて、店頭価格の暴落も防げます

10)備蓄米の大放出について


 農水大臣が変わり、随意契約で備蓄米が販売されるようになってからは、事情が変わります。
 随意契約の30万トンは半月分。出回らなかった半月分をもう一度出してきました。
 これだけ出すと流通側が半月分の不良在庫を抱えることになります。
 コメは保存がきく食品ですが、9月を境に価値が下がります。
 今日、2025年6月7日の時点では銘柄米がドサッとスーパーに並び、品薄感はゼロ。少々変化が!。でも価格は高止まりです。
 

11)これからどうなる?


 今、農水大臣対某流通 という構図になっています。
 大臣側も昔の恨みがありますから、本気でしょう。父ちゃんの血筋もあるし(笑)。
 はっきりしていることは、コメは月に60万トンしか消費されないということです。
 大臣側にはまだカードがあります。緊急輸入、そして関税の引き下げ。
 トランプ大統領という影の味方までいます。
 そしてこんな問題も。
 もしもまともな債券を買っていれば、単なる評価損の問題なのでなんとかなりますが、
 仕組債に手を出していたら大変!。ちなみにどちらなのかは公表されていません。


全部を図にまとめるとこんな感じでしょうか。もちろん筆者(高木誠利)推定です。

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こんな資料もあります
これは野菜中心の資料ですが、コメは5次卸まであるそうで・・・・・・。