IFTの調整方法 IFTの調整法
IFT(中間周波数用トランス)の調整方法って、ご存知ですか?。
信号最大!?、いや、そんなに簡単な話ではありません。
気が向いたので、ここにまとめてみました。
最初にAMラジオの調整法を、後半に無線機の調整法を記載しています。




ラジオの場合


 今はもう、いくつもIFTが並んだラジオと言うものは一部のキット以外作られていませんが、
 昔はIFT2〜3個、発振コイル1個というのが普通でした。
 トランジスタラジオでは発振コイルも外見はIFTと同じです。
 でも、発振コイルは必ず赤にペイントされていますから、これで区別してください。

簡易法

簡易に調整するのであれば、2段目以後のIFT(白と黒)を信号最大に調整するだけで大丈夫です。
一段目(黄色)のIFTをいじってしまうと、IF周波数がどんどんずれてしまいますし、
それを補正しようとすると発振コイルの設定もずれてしまいます。
今、正常に使えているラジオであれば、それ以上の事をしない方が良い結果となるでしょう。


まじめなやり方・・・球のラジオ

3点調整という言葉を御存じでしょうか。
簡単に言えば、フロントエンドの連動を完全にする調整ですが、これをやってからIFTを調整します。
もっと言えば、3点調整ができていないラジオで単純にIFTを調整するのは止めた方が無難です。
ですから、ラジオ編では3点調整も説明します。

・以下の文章で、羽を入れる、抜くというのはバリコンの軸を回す操作を指します。本当に抜かないように!
・また、IFT調整でSGをつなぐ際は初段IFTに影響がない処につないでください。
 発振混合管の第三グリッド(RF入力)に10kΩ前後の抵抗とコンデンサを介してつなぐのが簡単です。


1)オシロ等で局発の発振を確認しておく。オシロが無ければ省略
2)SG等の信号源で455kHzにIFT3つを信号最大に合わせておく。SGが無ければ下記★の方法がある
3)バリコンの羽を入れて低い周波数の信号を受信。OSC-TC2で受信周波数が表示と合うようにする
4)バリコンの羽を抜いて高い周波数の信号を受信。OSC-TC1で受信周波数と表示が合うようにする
5)(4)をやると(3)がずれるので、(3)、(4)を何度か繰り返す
6)低い周波数の信号を受信。ANT-TC2で受信信号が最大になるようにする
7)高い周波数の信号を受信。ANT-TC1で受信信号が最大になるようにする
8)(7)をやると(6)がずれるので、(6)、(7)を何度か繰り返す

<以下は省略可能、失敗すると厄介なので注意>
9)中間の周波数の信号を受信して、ANTのコイルに調整棒を近づける
10)調整棒のダストコア端(+)を近づけると感度が上がるならOSCコイルを減じる
11)調整棒の真鍮端(−)を近づけると感度が上がるならOSCコイルを増やす
12)調整棒のどちらを近づけても感度が下がるようなら(18)へ
13)調整棒が無い場合は、ANT-TC1を少し廻してみる。
14)容量増で感度が上がったら、(10)と同等とみなす
15)容量減で感度が上がったら、(11)と同等と見なす
16)ANT-TC1をどちらに廻しても感度が下がるようなら(18)へ
17)(3)に戻る
18)中間の周波数の信号を受信して感度最大になるようにIFTを再調整
<調整終了>

★(SGが無い場合)
あ)ほかのラジオを用意し、その地域の1MHz以下の強い局の周波数を調べておく
い)その強い局を受信し、他のラジオで局発の漏れを受信する
う)局発の漏れが、受信局周波数+455kHz になるようにバリコンの羽位置を変える
え)この時、ダイヤルが合っていなくても構わない。ANT-TC1を調整して感度を上げても良い
お)IFTを調整してその放送を信号最大にする



まじめなやり方・・・トランジスタラジオ

真空管式とはちょっと違う調整法です。
・以下の文章で、羽を入れる、抜くというのはバリコンの軸を回す操作を指します。本当に抜かないように!
・また、IFT調整でSGをつなぐ際は初段IFTに影響がない処につないでください。
 バーアンテナにリンクコイルを取り付けるのが簡単です。


1)オシロ等で局発の発振を確認しておく。オシロが無ければ省略
2)SG等の信号源で455kHzにIFTを信号最大に合わせておく。SGが無ければ下記★の方法がある
3)バリコンの羽を入れて低い周波数の信号を受信。OSC-Lで受信周波数が表示と合うようにする
4)バリコンの羽を抜いて高い周波数の信号を受信。OSC-TCで受信周波数と表示が合うようにする
5)(4)をやると(3)がずれるので、(3)、(4)を何度か繰り返す
6)低い周波数の信号を受信。バーアンテナのANTコイルの位置をずらして受信信号が最大になるようにする
7)高い周波数の信号を受信。ANT-TCで受信信号が最大になるようにする
8)(7)をやると(6)がずれるので、(6)、(7)を何度か繰り返す
9)中間の周波数の信号を受信して、充分な感度があることを確認する。(12)へ
10)感度不足の場合は、(6)の周波数を少し高め、(7)の周波数を少し低めにして再調整
11)(3)に戻る
12)中間の周波数の信号を受信して、IFTを再調整。ただし、1/2回転以内に留める事
<調整終了>
左の写真で、赤で囲ってあるのが、OSC-TC、ANT-TCです。

★(SGが無い場合)
あ)ほかのラジオを用意し、その地域の1MHz以下の強い局の周波数を調べておく
い)その強い局を受信し、他のラジオで局発の漏れを受信する
う)局発の漏れが、受信局周波数+455kHz になるようにバリコンの羽位置を変える
え)IFTを調整して信号最大にする


ICを使っていますが、このラジオは昔の8石スーパーとほぼ同じ構成です。


最近の物・・・トランジスタラジオ


一つ前の項と同じ調整法ですが、(2)IFTの初期調整や★は要りません。
何故なら、IF周波数はフィルタで固定されているからです。
前項の(3)から(8)までを行います。

下の写真のラジオはIFT(黄)を2つ使用してフィルタを構成していますが、
今のラジオではこれがセラミックフィルタに置き換わっています(隣のフィルタはFM用)

無線機の場合


9R59等の局発連動型シングルスーパー

これらは短波対応の真空管ラジオですから、基本的に真空管式ラジオと同じです。
・メカニカルフィルタは劣化します。メカニカルフィルタ等が入っている場合も含み、
  IFTの調整時には絶えず周波数を確認しながら作業してください。

周波数を確認せずに単純に単一信号で信号最大に合わせると、
メカフィルのスプリアススポットに合わせてしまう場合が充分有り得ます。

・IFTの調整(周波数合わせ)→各バンドの調整→IFTの確認 となりますが、
 最後にIFTがずれていた場合はもう一度各バンドの調整をし直す事をお勧めします。

・ANTトリマーは初期位置にします。調整中は動かしません。
 ANT入力が50〜75Ω標準であればSGはアンテナ端に接続できます。
 IFT調整時には455kHzトラップは殺してください☆。
 ANT入力がハイインピーダンスの場合は、SGを直接つながず、アンテナ線を介することをお勧めします。

☆トラップを殺す方法ですが、バイアスに影響なければコンデンサをショートするのが簡単です。
 影響するようならコイルをショートしてください。


局発非連動型・・・一般的なリグです

お待たせしました!。独立したDRIVE同調、PRESELECTがあるリグ、V,UHF機はこちらです。
但し、初期の50MHz帯機のように連動型RF同調がある場合は、上記、トランジスタラジオの項を参考にしてください。
その際、バーアンテナの表記はRF同調回路に置き換えること。コイル巻数調整はコイル形状調整になります。
I.E.W.のFDAMシリーズやTRIOのTR-1000系が該当します。

一般的なリグの再調整では、IFTを信号最大に合わせるようですが、その前に下記をチェックする事をお勧めします。

A)FMモードの有無を確認する。もしも、FMモードがある場合は、
  FM信号が通るIFTで455kHzの物をあらかじめチェックしておく

B)SSBフィルタ,AMフィルタの場所を確認する
  フィルタの両端のIFTはリップル最小に調整
  スイープ式発振器で前段から注入、出力はオシロで見ると分かり易い



  
C)上図の様な回路があったら、T1,T2,T4,T5はIFTではなくフィルタと考える事
  最初に調整するのはT3、これは局発なので設計周波数に合わせる。
  T1,T2はそれぞれ帯域の上、下で最大レベルとなるようにする。AMなら±2kHzぐらい
  T4,T5もそれぞれ帯域の上 下近くで最大レベル。
  T1、T2,T4,T5の調整で中心周波数で減衰が生じるなら、±1.5kHzで再調整(注1)

D)FM信号が通る455kHz帯IFTは、必要帯域が得られるように、適度に同調をずらす
  ±5〜7kHzの信号を注入して、レベルを同じにすると良い
  こちらは多少の中抜けOK。間違っても中心周波数でレベル最大にしない事(注1)


E)SSBフィルタ、AMフィルタより後に大きく離調したIFTがあったら、すぐに元に戻す事
  利得調整をしている可能性が高いので


 これらのIFTでは無い事を確認した後、初めて信号レベル最大に調整できますが、
 RF段と違って感度が上がる訳ではありませんから、
 一般的なリグの場合、レストア時にはIFTに触らないことをお勧めします

  


                              禁無断転載 C JJ1GRK 2020年






注1)
共振回路の帯域を考えれば分かる通り、10.7MHzのIFTは信号最大で大丈夫です。
10.7MHzの場合、放送受信用で位相特性を気にされる方もいらっしゃるようですが、FMステレオは2重変調となっていますので、
最初の復調後のコンポジット信号(最大57kHz)で有害なほど(0.05μ秒≒1440度)位相がずれていなければ大丈夫です。
その証拠に、送信機側に通常、位相特性の規格はありませんし、
(データ例、pdf)
コンポジット信号作成までを演奏所で済ませて、伝送後に周波数変換して送信所から放送するという事もあたりまえに行われています。

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