HD-DVDを作っていた東芝が撤退を発表しました
Blu-rayディスクとの規格争いに負けたという事で撤退を発表し、それに伴う損失が1100億円であると
3月19日に公表しました。
しかし、この撤退、私から見ると少々変な部分があるのです。(以下は私の想像を含んでいます)
1100億円の内訳を眺めると。
3月20日付、朝日新聞によりますと、
値下げや販促費で、500億と見込んでいた赤字が650億円に
生産設備の償却分が450億円ということです。
新製品だからもともと初めは多少の赤字を見込んでいたということですね。
ソニーのPS3は1000億円の赤字でスタートしていますから、500億円の販促費はそんなに法外な額では
ありません。世界の主導権を取るのなら安いぐらいです。
なぜ、撤退した?
最大の理由は、共同開発元とも言えるワーナーブラザースがBlu-rayに鞍替えしたことですが、
もうひとつ、年末商戦で5%のシェアしか取れなかったというのも理由とされています。
2005年4月に規格統一の機運が高まり数々の交渉を経て
結局2005年冬には完全に分裂してしまうわけで、そこから2年半、激しい戦いが繰り広げられました。
いずれにしろ、2007年の冬には負けてしまったのですが、撤退の可能性はこの頃から検討されていたのでは
ないかと思われるフシがあります。
どこに望みを託していた?
実際のところ、規格統一できなかった時点で、勝ち目が薄くなっていたのは間違いありません。
松下、ソニーの2社を敵に回し、さらに共同開発社のNECもBru-rayと二股を掛けていたのですから。
しかし、東芝には最後の望みがあったはずです。
それは、Blu-rayは生産が難しいということだと、私はにらんでいます。
実際、製品が潤沢に出てきたのは2007年夏以後で、HD-DVDよりもあきらかに遅れていました。
最大の誤算は?
しかし、Blu-rayの製品が潤沢に出てきたこと、そして、両対応ドライブが開発されたことで
状況が一変します。
最後の望みも断たれた訳です。
救世主に見える両対応ドライブも、これから普及させる機器で相手が強い場合は頭痛の種となります。
価格競争を余儀なくされるわけですから、孤軍奮闘しても赤字を増やすだけになるので。
そこで発動したのが「プロジェクト 撤退」、要は如何にうまくHD-DVDを止めるかです。
さて、ここでもう一度初めに引用した朝日新聞の記事を思い出してください。
スクロールして眺めても良いですが.....
撤退する以上、どんな形でも生産設備の償却は避けられません。
値下げも販促費もある程度は必要です。
しかも、販促費は日経の報道によると、ソフトウェアをおさえる為にも使われたようです。
あれ?在庫はどうしたのかな。
在庫処分費は?
650億円の内、200億円程度がソフト代として、残りの内300億円はもともと想定していた赤字分ですね。
で、150億円が撤退に伴う損失拡大分。在庫処分費はきっとここでしょう。
150億円。確かに巨額ではありますが、全世界に商品をばらまいているわけですから、
そんなにすごい金額ではありません。1台15万円として、10万台分。
SEATECで出された資料では、2007年1月〜9月の間に米国だけでHD-DVDは100万枚のソフトを売っていますから、
世界での流通量はそれよりもはるかに多いはずです。
普通に考えたら、勝負の途中で撤退したのなら、在庫処分費はそんなに少ないはずが無いのです。
だって、生産設備の償却分だけで450億円あるんですよ?既償却分を抜いた金額です。
寿命の短いハイテク商品、年間でその10倍ぐらいの生産量が無いと設備費はペイしないでしょう。
瞬間量だとしても償却分程度の在庫があるのが普通だし、本当に売れ行き不振だったらもっと在庫が
積み上がっていないと変です。
2007年は最終処分?
と、考えると2007年の安売りは納得がいきます。あそこで在庫処分をしていたのではないでしょうか?
(これは私の想像であり、根拠のあるものではありません)
このHD-DVDの安売りに引っ張られて、Blu-rayも安売りを余儀なくされました。(これは誰でも知っている)
で、一度下がった値段は戻りません。
家電製品が一番利益を上げやすいのは、先発組の生産が安定して、後発組が参入するまでの間と
言われていますが、今回は、勝者のBlu-rayがその時期に安売り競争をさせられたわけです。
見方によっては、5%しかシェアの無い(5%以下しか生産していない)HD-DVDが
Blu-ray機器の価格まで支配していたとも言えます。
ころんでもただでは死なないHD-DVD、って言ったら、言いすぎかなぁ
想像で描いている部分がありますので、これは特に無断転載禁止
C jj1grk 2008
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